今日では「地場産業」のデザインが注目を集めていますが、これは70年代の末期に私が切り開いたジャンルの一つだと思います。確かにそれまで、この領域で仕事をしていたデザイナーがいましたが意味が違います。動機は旧来からある茶道具でした。学生時代からモダンデザインを探しても一向に見つかりません。本当に一握りの名作しかなかったのです。そんな中、デパートの一角にあった茶道具の品々は眩しいほど研ぎ澄まされた美しさに心打たれました。その原点が古来の日本文化にあるとは、、。こうして私の漆の世界に飛び込みました。社会人になって８年目のことです。最初は流通業社をバックに秋田県の川連漆器、ついで青森県の津軽塗、石川県の山中漆器、そして近年の春慶塗(岐阜県)と続きました。はじめた当初、周囲から反対されたり、現地でのけもの扱いされたことは陰をひそめ、今ではデザイナーの憧れの仕事の一つとなり大きく変化しています。

「デザイン」は企業から見た場合と、社会や消費者から見た価値観、そしてデザイナー自身との関係は微妙に異なることを理解しておくべきです。端的に言えば「売れるデザイン」という言葉は工業デザインのジャンルの責務のように考えられて来ましたが、これほど間違った言葉はありません。40年間活動してきて、最も強く感じていることです。しかし、デザインした商品が売れなければ市場から消え、社会で役に立つことがないことも事実です。「デザイナーの自己満足」とよく称されますが、それは単にデザインの問題だけで完結することではありません。逆にデザイナーが「自己満足」出来ていないデザインは最悪です。デザイナーが納得して良いと思えるデザインはむしろ最低限の優れた商品の条件ではないでしょうか。双方が客観的に正しく受け止めることが求められます。

 

プロダクトデザインを実践する上で色々と付帯する他のデザインワークが必要になります。中でも印刷物に関する写真やグラフィックデザインは不可欠なものであり、一番力を入れて来た仕事の一つです。そもそも、製品に関してもグラフィック要素はほとんどの場合に表裏一体の関係にありますし、印刷に限らずプロジェクターを使ったプレゼンテーションやWEBデザインにおいても必ず関係して来る能力と言えます。

ついでに言うと、いわゆるマークやロゴタイプは大きく捉えると企業におけるコーポレートアイデンティティに繋がる重大な課題です。製品の魅力に直接繋がる問題なので深く理解しておきたいものです。

1947年-福島県(現三春町)生まれ

1970年-東京造形大学デザイン学科卒業

1974年-P&Pデザイン研究所共同設立

1985年-三原昌平デザイン事務所(現在に至る)

職歴

2003-2006年-岐阜県オリベ想創塾教授

2007-2013年-大同大学　情報デザイン学科教授

主な活動・企画展示会

1976年「もう一つのインダストリアルデザイン展」銀座松屋

1988年「マイお箱展」アトリエ・ヌーボー

1989年「音の出る箱展」アトリエ・ヌーボー

1979年「漆プロローグ展」アトリエ・ヌーボー

1980年「The椅子展」吉祥寺パルコ

1981年「あそびの木箱展」北海道近代美術館　参加

1986-87年「NEO TSUGARU展」AXISギャラリー

1998・99・2000年「マイプロダクト展」OZONE

2001年「福島の新世代クリエター展」

　　　　福島県立美術館

2002・04・05年「プロダクトデザインの思想展」

　　　　OZONEリビングデザインギャラリー

2010年「プロダクトデザインとしての茶室展」

　　　　国際デザインセンター

2011年「デザインの空白展」国際デザインセンター

主な受賞など

1977年「照明器具(ヤマギワ)」

　　　　ハノーバーメッセIF賞

1980年「温湿度計」Good Design

1981年「漆ボール」Good Design

1985年「ブリーフケース」Good Design

1986年「リストウオッチ」Good Design

1987年「ネオツガルテーブル」Good Design

　　　 「シガレットライター」Good Design

　　　 「温湿度時計」Good Design

1988年「歯ブラシスタンド」Good Design

1991年「アラームクロック」Good Design

　　　 「室内温度計」Good Design

　　　 「アラームクロック」ギフトショー金賞

　　　 「'91イノベーション賞」(ドイツ)

1994年「折り畳み椅子」Good Design

　　　 「振り子ウオールクロック」Good Design

　　　 「スタンド振り子時計」Good Design

2005年「PDの思想」Vol.1全国図書館協会選定図書